校長メッセージ 2026.03.14

卒業式式辞

雲一つ無い晴天の下、西の彼方に雪を抱いた蒼き富士の嶺を遥かに望む今日この春の佳き日に、さいたま市教育委員会教育長 竹井秀子様、さいたま市 市長公室長 石井幸人様をはじめ、ご来賓の皆様のご臨席を賜り、さいたま市立大宮北高等学校、第六十八回卒業式を挙行できますことは、本校にとりまして誠に大きな喜びです。
ただいま卒業証書を授与いたしました第六十八期生の皆さん、卒業おめでとうございます。また、ご臨席の保護者の皆様には、ここまでの子育てのご苦労に敬意を表するとともに、この日を迎えられたお子様の姿に安堵なさっていることと、心からお慶び申し上げます。
さて、卒業生の皆さんは新型コロナウイルスの感染拡大を憶えていますよね。未知のウイルスが世界中に拡大し始めた2020年の春、長い臨時休校を迎えた第1波の中で皆さんは中学校に入学しました。そして中学3年間で、なんと第8波まですべての感染拡大期を経験しました。そして、オミクロン株やクラスターなどという聞いたこともない状況の中、わが国で最も感染者数が多かった2022年から23年にかけて、高校進学に向けた受験勉強に取り組みました。常にマスクをしているから先生や友人の素顔さえ見ることが少なかった中学3年間を経て、努力の結果、希望が叶って本校に入学した3年前の5月、ようやく新型コロナはインフルエンザなどと同じ対処でよいとされる、いわゆる感染症法上の5類に移行しました。法的な外出自粛や一律の行動制限は原則なくなり、マスクをするしないを含む対応は、個人の判断が基本になりました。
それによって、まだ手放しでは喜べなかったまでも、皆さんは北高生になってようやく小学生以来の日常を取り戻し始めました。以来3年間、感染の恐怖から解放された学びの場で知を磨き、中学では十分にできなかった部活動や学校行事で汗と涙を流し、友人たちと向かい合って話をしながらランチを楽しみ、様々な場面でみんな笑い合い喜びを分かち合って、時には悩みを抱えながらも今日まで互いに支え合ってきました。そんな北高での3年間の努力の積み重ねと仲間との絆が、今日の皆さんの晴れやかな表情を生み出しているのだろうと感じます。
アフターコロナの北高での3年間では、普通に接して交友できる仲間がいたことが、何物にも代えがたい素晴らしい宝だったと思います。その陰では、学年主任の佐々木先生をはじめとする情熱的で愉快な学年団の先生方ほか、本校のすべての先生方が陰になり日向になって、皆さんを励まし支えてきました。さらには、これまで様々なことで迷い悩みながら常に皆さんに伴走し、誰よりも深い愛情を持って褒めたり叱ったり励ましたりしてくれた親御さん、ご家族がいらっしゃいました。皆さんは、そのような方々に感謝しながら一日一日を乗り越えて成長し、本日を迎えたことと思います。
そんな北高での学びとは、単に知識を得ることではなく、答えの無い課題に疑問を抱き考え続ける力を養うことでした。折しも、課題研究など探究的な学習が求められるようになり、皆さんはSteams TimeやSSHのプログラムなどを通して、それまでの高校生では経験しなかったような学びに取り組んで来ました。日常を取り戻した教室での問い、実験
や討論、失敗からの再挑戦は、皆さんの思考の幅を広げ、より的確な判断の基盤を作りました。失敗を恐れず挑戦する勇気、自分の言葉で考えを伝える表現力、他者の意見に耳を傾ける謙虚さ、そして自分の疑問や課題をさらに深めていく探究心、これらはこの先どんな道に進んでも必ず役立つ宝です。皆さんはそれを手にしました。
これから皆さんは、それぞれの進路へと歩みを進めます。それは、より専門性の高い新たな学びへの挑戦の道です。どの道を選んでも、皆さんは学び続けることを求められます。そこで大切なことは3つです。自ら考え行動すること、他者と協働すること、困難に直面しても諦めないこと。北高で手に入れた宝を活かして、さらなる高みへと自分自身を押し上げていきましょう。花咲く未来をつくり出せるよう、覚悟と志を抱き続けましょう。
未来は予測できない変化に満ちています。しかし、変化は同時に可能性でもあります。皆さん一人ひとりが持つ個性と情熱は、世界をより良くする可能性を秘めています。もし迷いが生じた時、困難に直面した時は、北高での学びや仲間との絆を思い出してください。自分の力を信じて、焦らず、諦めず、嫌にならずに歩み続けてください。
最後に、皆さんへの「馬の鼻向け」として、十九世紀のアメリカの詩人エラ・ウィーラー・ウィルコックスの一篇の詩を紹介します。
One ship drives east and another drives west with the selfsame winds that blow.
It’s the set of the sails and not the gales that tell us the way to go.
As we voyage along through life,
It’s the set of a soul that decides its goal, and not the calm or the strife.
吹いている風がまったく同じでも、ある船は東へ行き、ある船は西へ行く。
進む路を決めるのは風ではない、帆の向きである。
人生の航海でその行く末を決めるのは、凪(なぎ)でもなければ、嵐でもない、心の持ち方、魂の構えである。
皆さんがどのような風に遭遇しても、帆をどう向けるかは自分次第です。大宮北高校で過ごした日々を糧に、未来に向かって自分史上最高の自分を追い求め続けてください。
第六十八期生諸君、今ここに大宮北高校を巣立ち、混沌とした世界の中でどんな未来をつくっていくのか。君たちのつくる花咲く未来が、本当に楽しみだ。卒業おめでとう。これからも、欲張れ。
令和8年3月14日
さいたま市立大宮北高等学校長 関田 晃

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